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2013年8月21日 にあった、CEDECの講演についての記事です。

「日本人のための MMORPGの開発」 ~「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」の挑戦~



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●ドラゴンクエストの挑戦

ドラクエは 8以降、毎作 新しい挑戦をしてきた。

ドラクエ8 ・・・ 初のフル3Dでのドラクエ世界を表現

ドラクエ9 ・・・ 初の携帯ゲーム機での ドラクエの本編
        (どこに どれくらいの力点を置けば良いか かなり悩んだ)

ドラクエ10 ・・・ 初の MMORPGへの挑戦

 

●この講演の主題

なぜ 「ドラゴンクエスト」は挑戦するのか?

(別に 挑戦しなくてもいいタイトルのに・・・
 FFは変わるもの ドラクエは変わらない物・・・ と言う声)


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●ドラクエ10 発表の頃

2011年9月5日
「ドラクエ10」が MMORPGだと発表

→ 当時多かった声
 「ナンバリングじゃなかったら良かったのに
 「人に気を使いながら RPGをしたくない


RPG ≠ MMORPG

と、皆 MMORPGは 全然別のものとして受け止めていた。

→ 「そう言う反応が来るだろうな
  講演者 (ドラクエ10のディレクター)自身も、ドラクエ10の話を聞いた際 同じ反論をした

 

●ドラクエ10 開発開始の頃

ドラクエ8終了後、ドラクエ10のスタッフに誘われる。

MMOなんて 遊びたくもない
自分が遊びたくないものは 作れない
そもそも MMOの知識もないし

→ と、断った


 既に オンラインゲームの経験豊かなスタッフが揃っていたけれども
(「クロスゲート」「FF11」「信長の野望 Internet」)

→ もう、単にオンラインゲームを作っただけでは 普及しない
 ちゃんとした ドラゴンクエストのオンラインゲーム出さなければ 日本にMMORPGを普 及させる事はできない
 そのために、自分に声がかかったのだ

→→ プロデューサーより
  「これなら、自分も遊んでみたいと思うMMOを作って欲しい」と言われ それで決心
  ディレクターに就任した。


・MMORPGの2つの問題点

いいから 遊んでみなよ」と言われ 何度か挫折しつつも、MMORPGを遊んでみた。
→ 確かに 面白い!
 けど、そこに到達するまでのハードルが高すぎた。


MMOの世界に潜んでいた 目に見えない”魔物”に気付いた。
→ 「お約束」「セオリー」「常識

(これらは 主に、MMORPGのコアゲーマーが突き詰めてきた効率良い手法 など
先鋭化されたもの)

(実際、ドラクエ10開発中も スタッフに良くこう言われた
「MMOでは これが常識なんですよ」「これが正しいのはMMOの歴史が証明しています」)

→ まだまだ新しいことができるジャンルなのに
 この”魔物”たちによって ゲームの初心者の参入に遮られいる  と感じた。


・ディレクターに就任し、最初に決めたこと

このゲームで、MMORPGと言うジャンルを 日本でメジャーにしよう
(ドラゴンクエストで 達成できなければ 日本でMMORPGをメジャーにする事はできない
と言うくらいの決意を持って臨んだ)

→ 1986年に「ドラゴンクエスト1」が RPGと言うジャンルを 日本でメジャーにしたのと同じように

 

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●ドラゴンクエストの開発コンセプト


・ドラクエ10発表後に ”遊ばない理由”として よく聞いた言葉

Wiiが 無いんだよね・・・
 → 対応策: プレイヤーがより触れやすい環境の提供
        (Windows版の発売予定)

月額課金がなぁ・・・
 → 対応策: 「定額」&「割安」の料金設定 月額1000円 (他タイトルは1200円~2000円)
        「キッズタイム」の導入     (平日 16時~18時、休日 13時~18時 無料)


私は オンラインゲームはやらないんです

 → ここに注目
 
 「なんだか難しそう、めんどくさそう
 「人と一緒に遊びたくない
 「ゲームを止められなくなる恐怖

 →→ MMORPGに対する 世間の悪印象そのもの
 
 →→→ この心理的障害を取り除かない限り、国民的MMORPGを作るのは不可能だと考えた
 


・考えた対策

難しそう、めんどくさそう
→ いつものドラクエと同じ

人と一緒に遊びたくない
→ ひとりでも遊べる

ゲームをやめられなくなる恐怖
→ 依存化しないゲームデザイン


これを、ドラクエ10の 開発コンセプトとした
(日本人のための MMORPGはこれだ!)

 

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●開発コンセプト達成のためのゲームデザイン


・「いつものドラクエと同じ

・画面上の情報を最低限に
  
画面は ここまでシンプル


・コマンドメニューも いつもと同じ

堀井雄二が 「こうしたい」と かなりこだわった所でもある


・バトル中の画面もシンプルに
 

← プリプロで作った戦闘画面            → 現在の戦闘画面
(こう言う物を 目指して作ろう と作った動画)

プリプロ版は これでもかなり 画面上の情報は最小限にしたつもりだけれども
左上に コマンドメニュー  右下にメッセージがあり
行動待ちまでのタイマーゲージもあったり

最終的には ここまで削ぎ落とした


・エンディングまで遊んで 終わりでいい

一番最初に公開したバージョン(1.0)から 「エンディング」を含む全シナリオを実装
(当たり前と思うかもしれないけれども

少しずつコンテンツを追加していく オンラインゲームでは 珍しい事例)

→ いつもの、一人で遊んで エンディングを見てゲーム終わり でもいい

 

・「ひとりでも遊べる

サポート仲間

→ その時 遊んでいないプレイヤーのキャラを NPCとして
 好きな人数仲間として連れて行ける。
 


・「依存化しないゲームデザイン

ゲームをしていない間にメリットが生じる仕組み
(堀井雄二も 社会問題にもなっているネット廃人をドラクエで生みたくない
と考えていた。)

→ 自分が遊んでいない時に キャラをサポート仲間として他の人に貸して
 経験値やゴールドを稼いでくれる。

→ 遊んでいない時間を 「元気玉」と言うアイテムに交換
 (使うと、経験値とゴールドが30分間2倍になるアイテム
 ログインしていない時間 22時間毎に1つ入手)

 

遊ぶことが”義務化”しないゲームに

→ レベル差がついても 一緒に遊べる仕組み
 (敵の経験値を レベルに応じた比率で分配する。
 レベルが高いプレイヤーの方が 得られる経験値は高めになって
 レベルが低いプレイヤーは損になるけど、一緒に遊べなくはない) 

 (良くあるMMORPGの場合 敵と自分のレベルの相対差から
 得られる経験値が増える手法)
 

→ 毎日遊ぶことで 何か倍率が上がるような仕組み導入しない
 (ソーシャルゲームで良くある 連続ログインする度に より良い物がもらえる とか)


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●オンラインゲームの楽しさをちゃんと入れる

上の話は、これらは 懸念点に対して対策をうっただけ

そもそも、どうやって面白くしていこうか?


・自キャラが 人間以外の種族

→ え? これって ドラクエ??
  プレイヤーが人間 と言うのが、ドラクエらしさでは?

→→ 堀井雄二の 強い意向

→→ プレイヤーは 「人間」と「他種族」 両方の姿を持ち
  ストーリー的に深く関わっており
  好きに姿を変える事ができる と言う設定にした


・バトルがリアルタイム進行

→ え? これって ドラクエ??
→→ 堀井雄二の 強い意向

→→ 起きていることが 見た目で把握できるバトル
  (テキストを見ないと把握できないバトルには決してしない)

→→ 移動干渉バトル
  (キャラクターが モンスターを押すことができる。
  モンスターを押して、他の仲間に攻撃をいかせないようにするシステム)


・人とのコミュニケーションの楽しさ

→ キーボードなしでも コミュニケーションできる配慮

→→ 「おうえん」や「ジャンプ」で 気軽なコミュニケーション
   「よく使うセリフ」は コマンドから呼び出し

→→ チャットは 「安心・安全」に徹底的にこだわる
   相互認証がない状態での 1対1のチャット禁止


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●従来のオンラインゲームを超えるための さらなる「あそびやすさ」の追求

・一緒に遊ぶ機会を失わせない配慮

サーバー移動は自由

→ サーバー違いによって 友達と遊べない と言う事をやりたくない
 (プロデューサーが 一番やりたいと思っていた仕様)


・世界はひとつ! 別サーバーにいても 一緒に遊べる!

→ 別サーバーのプレイヤーと パーティーであり続けたり、チャットすることもできる

→→ これ、技術的に かなり頑張っています。


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●ドラクエ10 発売後の話


2012年8月2日 発売

思った以上に ドラクエだった!
ちゃんと一人で遊べる!
社会人だけど 楽しめる

 

・運営の話

最初に起きた問題

→ 想定を越えるプレイヤー数に溢れ出した技術的問題

→→ 連日の緊急メンテ
   サーバー 逐次増強


プレイヤーと一緒に世界を作っていく という事

→ モンスターの狩場が集中しすぎるという問題が発生
 (ていあんひろば で、大きく問題視されていた問題)

→ モンスターの経験値データ見直し
  強敵ボーナスの導入
  同じ敵を100匹倒すと ちいさなメダル プレゼント (倒したいモンスターを循環させる)

これにより、狩場の分散に成功


とは言え、現実的に解決できる問題は とても少ないです・・・
(提案してもらっても 技術的に難しかったり、開発側の考えている方向性と違っていたり)


・運営 失敗の事例

名声値”の問題

想定を超える”名声値”を得られる状態になっていた

→ 得られる”名声値”を本来の仕様に修正
→ 既に”名声値”を得たプレイヤーのデータは マイナス修正しなかった

→→ プレイヤーの非難が殺到

(そう考えた理由としては・・・
”名声値” のゲームに与えられる影響度は 小さい事
後から ゆっくりと帳尻合わせの調整を入れて 生まれた差を埋める予定でいた)


・殺到した非難を受けて対応策

”名声値”を 不具合な状態に戻し、全てのプレイヤーが等しく”名声値”を得られる状態にした

→ ”名声値”を多く得て 得したプレイヤーの数値を基準に 全プレイヤーの”名声値”を付け直した

→→ 謝罪・不具合に至った経緯の説明
   将来的に 名声値をどうして行くか? のプランをちゃんと説明


・失敗から学んだこと

根底にあったものは・・・

→ 情報不足からくる プレイヤーの「不安

→ 「情報公開」にかける労力が十分でなかった
 (名声値が ゲームに影響少ないのは 開発者だから 知っている事だった)

→ 「情報公開」の”機会”と”質”を改善

  中・長期的な展望の公開
  定期的に 開発側のメッセージの配信
  仕様の変更に対しては、ディレクターコメントとして ちゃんと理解をしてもらう。


●そして、サービス開始から1年が過ぎ・・・


毎日 25万 ~ 30万人のプレイヤーが 遊んでいます。

ドラクエが好きな人のテーマパークにしたい と思い、始めた開発であったけど
それに近づいてきたかな
 

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●まとめ

・なぜ挑戦するのか?

「ゲーム」は形式美を尊重する古典芸能ではない。

時代に合わせて 新しい事に挑戦し続けなければ 
たとえ「ドラゴンクエスト」と言えども 消えてしまっていくのでは


・新しい事をするのは 大変です。

ネットで叩かれたり、挑戦する事自体 笑われたり。
そんな目に 何度も合ってきました。


ドラクエ10発表時 桜井 政博氏のコメント

オンラインと聞いて、従来型の「ドラクエ」の方がいい、と言う人は少なくないかもしれません。
しかし、進歩や変化や突然変異に寛容な、あるいは それを当然とみなすゲーム業界でないと
同じ場所で足踏みするばかりで困ってしまいます。


・自分が面白い と思った物を作ろう

市場を読んで作るのではなく、自分が本当に面白い と思う物を作るべき

FF7」は 世界の市場を読んで作ったものではなく、
当時のスタッフが 本当に面白いと信じて作った物を 世界が受け入れ 世界中の大ヒットとなった。

→ 市場は 思った以上に 新しい挑戦や 新しい面白さに 寛容なハズだ


→→ 自分自身の面白い を信じて、”新しいこと”を やろう



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4年前に 「ドラゴンクエスト9」の発売直後
堀井雄二による 講演がありました。

合わせて見てもらうと良いかも知れません
http://sekigames.gg-blog.com/Entry/94/


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